雨怪 Amekai

離島住みの怪談好きの創作

2020-01-01から1年間の記事一覧

創作怪談「寒いの」

道路の端一杯に車体を寄せて、速度をグンと落とす。あと数メートル走行したら、僕の運転する車はエンストし停止してしまうからだ。気の抜けた音と共にエンジンが停止し静寂に包まれる。傍らに置いていた煙草を手に取り火を点ける。細く煙を吐き出しながら、…

創作怪談 「誰が殺した?」

目覚めると、自室の真ん中に男の死体が転がっていた。後頭部に大きな打撃痕があり、そこからあふれ出た血液がこめかみを伝い床に大きな水たまりを作っている。傷の具合から見るに背後から何者かに思い切り殴られうつ伏せで床に倒れ、そのままこと切れてしま…

創作怪談 「見ている」

お盆で実家に帰省した。移動の疲れを癒すために家でのんびりとしていると、旧友から連絡があった。多忙でここ数年戻ることができなかったようだが、今回はなんとか帰ってくることができたらしい。玄関先から聞きなれた声がした。弟の声だ。その後に続いて弟…

僕と犬の因縁

こんばんは、通り雨です。幼い頃から僕は犬に好かれません。僕自身は犬のことが好きなのですが、今まで出会った犬たちの中で僕に対して好意的な犬はとても少ないです。大抵の犬には背を向けられてしまいます。近所の人懐っこいことで有名な犬には親の仇のご…

創作怪談 「幼い訪問者」

たまの休み。自室のソファで横になり、動画を視聴しながらウトウトし始めていた時。「すいません」幼い子供の声が自宅の表から聞こえた。「○○さんは御在宅でしょうか?」子供は、僕の名前を口にした。声の感じから小学校低学年ぐらいだと思うが「御在宅」な…

創作怪談 「彼女の笑顔」

念願の一人暮らしをすることとなった。都市から近すぎず、遠すぎずの距離にある静かな住宅街にあるマンションの一室。しかし、ここに念願の自分だけのユートピアを築こうと思っていた僕の出鼻はくじかれることとなる。それは引っ越しを終えた初日の夜に起こ…

創作怪談 「墓場通い」

夜の墓場で、お酒を飲んでいた時期がある。当時の私は職場でのストレスによって眠れぬ日々を過ごしていた。ベッドで横になっても眠れず、体だけは休めようと目を閉じはするのだがあれこれと嫌なことを思い出し、あれこれと嫌なことを考え出しで少しも休まら…

創作怪談 「感触」

気が付くと僕は森の中にいた。何故か右手に大型の両口ハンマーを携えて。眼下には座布団ほどの大きさの切株があり、その横に老人が腰を下ろして僕を見上げている。老人は傍らに置いた麻袋の中からリンゴを一つ取り出すと、切株の上に置き。「頼むよ」と言っ…

創作怪談 金縛り

来た。金縛り。友人宅で眠るといつもこうだ。美味しい物をたらふく食べて、たらふく飲んでこの上なく良い気分で眠りに落ちれたというのに。金縛りの原理が科学的に解明され、霊などの仕業ではなく単なる生理現象だと知った時僕は心底喜んだものだ。が、それ…

実話怪談 「真っ赤な箱」

こんばんは、通り雨です。今日は僕の母が、修学旅行先で体験したお話です。母は普段からよく一緒に遊んでいた友人と二人で自由時間を共に行動していました。土産屋や観光スポットを巡るのではなくその土地の美味しい物をなるべくたくさん食べよう。というテ…

創作怪談 井戸の中で待ってます

「今日の放課後、暇?」 昼休憩、隣のクラスのAが、僕を訪ねてやってきた。僕はかじったアンパンがまだ口の中に残っているのをよそおい、返答を待つAに掌を向けて制しながら考えを張り巡らせた。どうやって、この誘いを断ろうか。時折ふらっと現れるこの男…

実話怪談 死神

今回のお話は僕が実際に体験したことを脚色無しで書いていきます。二十代前半に僕はかなりレアな体験をしました。「生と死の間」から帰還したのです。こう書くとかっこよくて、どこか荘厳な印象を与えることができるのですが、実際はどこに出しても恥ずかし…

創作怪談 自動販売機

飲み足りない・・・最後の缶ビールが底をつきかけた時にそう思った。休みの前日、趣味である怪談を聞きながら夜更かしをしていると興が乗ってしまい、普段は缶ビールの二本も飲み干せば眠くなってくるのだが、今日はまるで眠くならない。時刻は深夜12時に…

心霊写真を焼き増ししたら・・・

あなたは、悪魔というものを見たことがあるか?僕は見たことがある。そして今も悪魔に苛まれ続けている。美術の教科書に描かれている悪魔のように悪魔ぜんとしたものではない。そうであったら「ここに悪魔がいるぞ!」と言って、正義の名のもとに火あぶりに…